「ジャッキー・ボーイ」------------------------

 

思い出を大切にするグーデリアン家には各所に多くの写真が飾ってある。

しかしいつも一番居心地のいい場所に飾ってあるのは、きまって古い銀の

フレームに入った、小さくて古ぼけた1枚の写真。

 

『ジャッキー』

その写真はすでにセピア色だけれど、おそらく、きれいな金髪で緑の目の

少女が写っている。その顔はどちらかといえば美人とはいえないけれど、

人を幸福にする力を感じる。

その下に書いてある、崩れたアルファベットの数文字は、

彼女を愛してやまなかった、無口な男の文字。

若いころは二人とも働くのに精いっぱいで、なにより、

自分が写真に写るのは嫌いな男だったため本人の写真は1枚も残っていないけれど、少女の目の先にははっきりと、幸せな彼の姿がある。

 

 

ケンタッキーの10月は、木枯らしが吹く季節。

しかしそのフレームの飾られた暖かい暖炉の前では、大きな青年と小さな祖母が、

何かを見ながら、肩を寄せ合って話をしていた。

 

「・・でさ、ばあちゃん、こいつなんだけど。」

「どれ、写真を見せてごらん?・・ふむ、意志の強そうな、ボーイにしては

上出来なハニーだね。」

「ばあちゃんもやっぱりそう思うだろ?

・・ただ、ママ達にどうやって説明しようかなって」

「テレビ見てる限り、今更説明する必要も無いと思うんだけどねぇ。

ジャッキー・ボーイ。昔っから、よく好きな女の子にはイジワルしてたじゃないの。」

「・・あのさ、オレももうティーンじゃないんだからそろそろボーイっての、

やめてくんない?

「グランマに恋の相談をしにくる時点でまだまだ青いわよ。

インディでミルク飲んでた頃と変わらないねぇ」

「ばあちゃーん!

「もっとも、あたしがもう10才若けりゃねぇ」

「・・孫のハニーにまで手を出すなよ!

「甘いわねジャッキー・ボーイ。恋に年なんて関係ないのよ。もちろん性別もね。」

「・・ばあちゃん・・」

「ま、がんばんなさい。ママ・ジャッキーはいつでもあなたの味方だから。」

 

ママ・ジャッキーこと、『ジャクリーン・トーマス・グーデリアン』

それは「全てのお客様に愛と幸せを」をモットーにする、

花形スーパーマーケットチェーンを創設した女帝の名前。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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