「・・ハイネル?」
「あぁ・・すまないな。」
「どうした〜?」
「・・息苦しい・・」
グーデリアンは予備のスツールを転がし、ハイネルの枕元に座った。
耳元に顔を寄せ、額で熱を測る。
「熱かな?」
「いや、体調は悪くない」
グーデリアンは机の上に積み上げられた、付箋だらけの紙の山を見て苦笑する。
「・・また暇なマスコミと、物事をよく知らない『専門家』が騒いでるだけだろ?
そのうちなんか大統領のスキャンダルでも発覚すれば、あっという間に収束するぜ。」
「そういうわけにもいかんのだ。きちんと説明をしておかないと。しかし、それだけではない。」
「ん?」
「走って・・勝って・・でも、それだけじゃない・・」
夢や理想、メッセージ、伝えたい沢山のこと。それらの重圧に時々潰されそうになる。
未来のこと、スタッフのこと、多くの敵と味方のこと。それらがさらにハイネルを苦しめる。
『お前は、自分が全能だと思っているのか』
困難に直面するたび、心の中の何かが常にハイネルをあざ笑う。
全能ではないが、近づきたいとは思っている。それは自分には過ぎた希望なのだろうか。
「ダイジョーブ、俺がついてる。そして俺はオマエと一緒ならどこでも行くよ。」
ふいに、耳元でグーデリアンの声がした、
グーデリアンはハイネルを椅子ごと後ろから抱きしめる形になり、さらに耳元でつぶやく。
「お前がまっすぐ好き勝手に進んでるのが、俺の一番の幸せ。俺はそんなお前を一生かけて守ると決めたんだ。」