グーハーチャットの中で出たグーデリアン作グーハーチャイルドのお話(できてるとこだけ)
手直し案外時間がかかりました。まさにイキオイ書きです。ご了承ください。
至極平穏な、普通の平日の午後3時過ぎ。春先にしては陽気はほかほかと温かい。
かつての荒鷲ジャッキー・グーデリアンはオーブンから焼きたてのクッキーを出すと、
その香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
やがて、ドアが開いて背の高い少年が帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりフレディー。クッキー焼いたから、コーヒーいれてくれよ。」
「わかった」
フレディーと呼ばれた少年は、ディパックを部屋に置くために、階段を上っていった。
彼の名はフレッド・ハイネル・グーデリアン。14歳。
世界に名だたるCFレーサーであるハイネルとグーデリアンが、新技術によって生み出した「子供」。
倫理感が、短絡的だ、実験的すぎる等の数々の批判も受けつつも、
グーデリアンの「俺はハイネルとの子供が欲しい」というきっぱりとした宣言と、
ハイネルの「世の中の、子供を得る手段の一つだと思えばよい」という理論的な発言と、
なぜかそこに乱入したランドルの「男同士で子供を作って何か問題が?」という強引な後押しもあり、実現した。
その後、グーデリアンはCF界をさっぱりと引退し、フレディーの世話をしながら
折を見ては後進の指導をするという生活に入った。
その時は、フレディーはハイネルとともに出勤し、シュトロブラムスのベビールームに預けられた。
そこに、自分の子供は年に数時間しか会わなかったはずの会長(前社長)が頻繁に訪れ、
社長となったハイネルにこっぴどく怒られるのは日常茶飯事だった。
やがてフレディーがセーターにジーンズという姿でキッチンに現れた。
グーデリアンが「ハイネルそっくり」という金髪碧眼にすらりとした長身。
頭脳は明晰、スポーツは万能。本人は気にしている容姿は鋭く、冷徹な印象すら与える。
フレディーはクッキーの種類を確かめると早速豆を選定にかかった。
ペカンナッツのプラリネの入った甘く香ばしいクッキー。
香りを邪魔しないあっさりとした、しかしコクのあるブレンド豆を選ぶ。
辛辣で神経質。冷静で冷めた性格は、身長も手伝って年よりもはるかに大人びて見えるが、
グーデリアンは見逃さない。それが成長期にありがちな強がりであることを。
だから学校から帰ってきたら出来るかぎり、話を聞くことにしている。
「フレディー、コーヒーが入ったらハイネルの書斎にも持っていってくれ。今日は家で仕事してるから。」
「・・ジャッキーが持っていけば。」
「どしたよ。ハイネルと喧嘩でもしたのか?」
「・・なんでジャッキーがママなのさ」
「なんでって?」
「CFレーサーの地位を引退してまで、なんでママにならないといけなかったわけ?」
ドリッパーにフィルターと荒引きの豆をセットし、上からゆっくりと湯を落とす。
フレディーの目はずっと豆を見つめていた。
「188cmのママってあんまりいないだろ?」
『185cmもまずいないと思う』といおうと顔を上げたフレディーは、眼前ににんまりと笑うグーデリアンを見つけた。
グーデリアンは、にっと笑って、茶化すように言う。
「あのさ、お前、好きな子とかいないわけ?」
「女に興味はない。野郎にはもっとない。」
「変なとこハイネルそっくりだな。」
「悪かったね。」
「いや、好きな子ができたらそのうちわかるさ。なんで俺がママなのかってね。」
「?」
「好きな人のために何かをしてやれるってのは、この上ない幸福なんだぜ、フレディー。」
「で、それがなんでママになるわけ?」
「わかんないうちはまだまだコドモだネ。まあ、ゆっくり大きくなんな。」
フレディーの止まっていた手からポットを受け取ると、温めたカップに3杯のコーヒーを注ぎ分ける。
一つにはたっぷりと砂糖を、一つにはたっぷりとミルクを入れて憮然とするフレディーに渡す。
そうして一つ、何もいれてないカップと砂糖を入れたカップを持ってグーデリアンは書斎に急いだ。
「ハイネル、コーヒー」
「・・あぁ」
書斎にコーヒーの香りが漂い、つられてかたかたとキーボードの上を走っていた指がカップに伸びる。
ハイネルは相変わらず何もいれないコーヒーを一口口に含むと、ふとしかめていた眉根が緩んだ。
「・・・」
「うまいだろ、それ?」
向かいの椅子に座ったグーデリアンが、砂糖入りのコーヒーを飲みながら笑う。
午後の光が白髪が混じってきた淡い金髪をすり抜ける。
「あぁ・・」
「フレディーがいれたんだよ。豆から挽いてな。」
「・・・・大きくなったな。」
「そうだな。でもまだコドモだよ。お前そっくり。」
「・・私が子供だといいたいのか。」
「そうだね。でも、それでいいんじゃない?」
飲んでしまったカップを受け取り、グーデリアンは立ち上がる。
「夕飯、何がいい?」
「魚が食べたい。コーンミールのフライ。」
「オッケー。じゃあ、それまでに仕事済ませろよ。」
返事もせず、またカタカタとキーボードを打つ音が始まる。
書斎のドアをそっと閉め、グーデリアンはフレディーの待つ階下へと戻っていった。
鼻歌をうたい、三人で囲む夕食のメニューを考えながら。
ブラウザのバックで(以下省略)・・